食の安全と言う言葉がメディアに登場するようになったのは2003年頃の事です。
現在は食肉を中心に野菜の産地などが話題に上がりますが、魚の情報開示も今以上に求められるようになる見通しです。
悪評を乗り越えたノルウェーのアトランティックサーモンの事例と養殖マグロの安全性、情報の活用についてお伝えいたします。
■ノルウェーアトランティックサーモンの悲劇
ノルウェーのアトランティックサーモンは国家的な一大事業として国を支えており、日本国内でもスーパーや飲食店で幅広く取り扱われています。
1980年代初めから養殖方法が確立され、日本でも回転寿司のネタとして人気があります。
90年代後半には殺到した養殖業者によって品質が低下し、その頃の名残で国内Web上の評判は非常に良くありません。
2006年には国が新しい法律を制定し、近年事業者の間では好評で冷凍チルドキロ2000円程度で安定しています。
現在では売買ライセンスと養殖環境テストをクリアした事業者のみが生産を許可されており、ノルウェーアトランティックサーモンの世界的な成功、日本でのシェアを考えると国家品質保証とライセンス制度は国内養殖事業が世界へ羽ばたく為に必要なプロセスだと言えそうです。
■日本の高い管理能力と高品質な養殖クロマグロ
日本の衛生管理基準は世界的に見ても非常に高い水準で、各国で日本製の食品は高い評価を得ています。
クロマグロにおいても日本では生食が中心になるので生産から流通、提供に至るまで適切に管理されている状態です。
今後クロマグロの完全養殖が普及すれば全ての段階をチェック出来るようになります。
養殖場もマグロを守るため清潔な状態に管理されているので、前述した品質保証の世界的な水準は既にクリアしていると言えます。
国内でも清潔感や安心感はブランディングに繋がる重要な要素としてアピールされているので、海外での流通でも安心安全を付加価値として提供出来る強みを活かした戦略が期待されます。
■クロマグロをはじめとする養殖魚の安全性
トレーサビリティーという言葉をご存知でしょうか?
遺伝子組み換え食品やBSE、偽装問題をきっかけに広まった言葉で、食品においては生産工程や流通過程を消費者が確認できる仕組みの事を言います。
国内でも食肉分野では農林水産省が中心となってICタグの導入が進められています。
産地など義務化されている部分もありますが、国内では付加価値としても認識されており、生産者の顔写真やHP上での情報公開は消費者に人気があります。
食肉、野菜が目立ちますが、EUでは「TraceFishプロジェクト」として水産品への導入が進められています。
天然資源である魚の中でもクロマグロはかなり遠方からやってくる魚なのでどこでとれた魚なのかを表示するのが限界ですが、養殖であれば年齢や体重、食べていたエサに至るまで追跡する事が可能です。
養殖クロマグロへのICタグ導入の実験や研究も進められています。
消費者へのサービスとして義務以上に情報を開示する事がサービスになる時代なのです。
配合飼料の良さをアピールしているクロマグロのブランドも好調で、国内養殖マグロ競争にも伝わりにくい良さを伝える事が出来るWebの活用が求められています。
美味しいクロマグロを自信を持って紹介するだけでも、私達消費者は明るいイメージが持てます。
成功している食品ブランドは、食肉や野菜だけでなく養殖クロマグロも個の発信力が高まっている時代の利を活かした戦略をとっており、美味しさだけでなく安全性のアピールでもブランドの確立、自社製品の販促に繋がっています。
この傾向と共に消費者の理解と意識は今後も高まっていくと考えています。