ブランディングに成功したフルーツ魚 クロマグロ養殖でも餌改良へ

      

養殖事業の盛んな九州では、柚子やかぼすを使った養殖魚のブランディングが盛んです。
柑橘類の成分が体内に残る事で、臭みが抜けさっぱりとした味に仕上がるそうです。
成功事例として柚子鰤王とかぼすヒラメを紹介すると共に、配合餌料の研究が進む養殖クロマグロの展望についてもお届け致します。

 

 

■フルーツ魚の火付け役 柚子鰤王

 

柚子鰤王は、高知大学が開発した養殖ブランドで2007頃から販売されています。
元々の研究では身の変色を抑えるために柚子の抗酸化作用について調べていたそうですが、鮮度保持に加え香り成分が魚に残るため、生臭さを押さえサッパリとした食味になる事を発見しました。

 

大規模な生産はまだ始まっていないようですが、4.5kgが1本7800円程度でネットショップを中心に販売されています。
非常に好評で興味深い製品ですが、類似品も出回っておりブランドを守る取り組みについても養殖事業者全体で取り組む必要があると考えさせられます。

 

 

■下入津地を救ったかぼすヒラメ

 

大分ではかぼすを使ったヒラメの養殖が成功しています。
「かぼすヒラメ」のブランドで、かぼすを使ってサッパリとした味の良い身質への改良に成功しました。
韓国産ヒラメの流入より値崩れを起こし廃業が相次いだヒラメ養殖の町を付加価値のついた単価の良い生産で救ったそうです。

 

エサのコスト増もありますが、ネットショップを中心に好評で、都内飲食店など新規販売先開拓への取り組みも行われています。
九州は養殖やエサの改良が盛んで、ナツメグを使った鯖、みかんを使った鯛なども生産されています。

 

 

■餌の改良によるクロマグロの品質向上

クロマグロ養殖の餌料もまた改良を重ねられてきました。
マグロは硬いものを吐き出す性質があるため、魚粉と魚油を使って柔らかな食感を再現した餌料が使われています。
クロマグロは他の魚に比べ運動量が多く、体重を1キロ増やすためには13キロのエサが必要になると言われており、養殖事業ではエサのコストが非常に大きな意味合いを持っています。

 

コストが増加する生餌は、調達面の問題だけでなく水質汚染や味の劣化を生みましたが、配合餌料の研究が進み生餌と混ぜる事で水質の改善や魚に必要な栄養をしっかり与える事が出来ます。
現在の配合餌料は、コスト面の改善と共に味へのこだわりも研究されており、生餌も複数の種類を使う事で美味しいクロマグロが提供されるようになりました。

 

エサのコントロールには安全な品質を確保する意味合いもあります。
自然界に存在する毒性物質を溜め込んでしまう魚は複数種存在していますし、マグロもリスクがあります。

養殖でエサをコントロール出来れば、より安全なクロマグロを生産する事ができるのです。

 

技術の発達により味を落とさない配合餌料も開発されており、当社とお取り引きいただいております株式会社兵殖様ではメーカーと協力し生餌を与えず、オリジナルの配合餌料のみを使った養殖クロマグロの生産が行われています。
稚魚から成魚の段階に至るまで、魚の状態や水温に合わせた最適な栄養成分のエサを与えることで、1年中「旬」なクロマグロの育成を可能にしており、豊後まぐろ「ヨコヅーナ」として全国の提携飲食店で提供が開始されました。
世界初の試みとして高く評価されているだけではなく、栄養価が高く味も良いと消費者からも好評です。

 

 

現在のクロマグロ用餌料では、植物性タンパク質を中心とした製品の開発が研究されています。
鯛やヒラメでは一般的な餌料で、他の魚よりもエサ代のかかる養殖クロマグロのコストの低下、もっと進めば柚子鰤王やかぼすヒラメのように付加価値を与える事に繋がるかもしれません。

 

エサの改良による養殖クロマグロの事業性向上に注目が集まっています。

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