天然モノの減少と需要の高騰で資源のコントロールが問題視されているクロマグロ。
天然資源への問題提起が年々過熱している事を考えると、クロマグロ養殖事業の必要性は今後ますます高まりそうです。
■栽培漁業と養殖漁業の違い
広く普及しているクロマグロの養殖方法は養殖漁業。
コワと呼ばれるマグロの種苗を採捕し大きくなるまで管理育成を行う方法です。
適切な管理で安全な品質の確保とエサや飼育の技術による脂の乗り、身質の改善を目指しています。
小さな魚を大きく育てる事業性の高い養殖業態です。
一方、栽培漁業は卵から稚魚へある程度成長したら放流し、自然に育った魚を漁獲しようという方法です。
こちらは天然資源の回復効果がありますが、研究施設維持へのコストが大きく、放流事業者のみが漁獲する仕組みではないので、回収が安定しないデメリットを持っています。
大きく二つに分けましたが、クロマグロという魚を最大限活かすには中間的な事業者や全体の協力が必要かもしれません。
■クロマグロ種苗生産の現状
クロマグロ養殖は前述したように天然資源に種苗を頼っているのが現状です。
世界的なクロマグロ需要の高騰と天然資源の減少が懸念されている中で、安定した成長と供給を促す養殖漁業は意義のある事業だと言えますが、天然種苗の確保には限界があります。
クロマグロだけでなくうなぎも顕著で、価格の高騰は記憶に新しいかと思います。
日本ではうなぎの完全養殖にも成功していますが、7年たった今でも市場への流通には成功していません。
これはシラスウナギの生態研究がまだ途上であるために、安定した大量生産に成功していない事が理由です。
完全養殖には孵化から稚魚へ、エサや必要な水質など成長過程の研究も必要不可欠です。
クロマグロの完全養殖も同じ問題をクリアしなくてはなりません。
■クロマグロ資源のコントロールと完全養殖の普及を目指して
クロマグロの完全養殖はまだ発展途上ではありますが、近代マグロが一般の消費者に届けられた事は大きな一歩であったと思います。
完全養殖によって人口種苗の確保、放流による天然種苗の増加も期待できます。
研究と普及が進めば人口種苗の利用でコストが抑えられる時代が来るかもしれません。
クロマグロの安定した供給も見込めるようになるでしょう。
双方をバランスよく養殖事業に取り入れることで、天然種苗と天然クロマグロ資源の確保や、養殖クロマグロの安定した供給、そして世界のクロマグロ全体のコントロールに繋がると期待が集まっています。
世界的な消費が進むクロマグロですが、やはり日本が世界を納得させる必要があります。
ですが、クリアしなければいけない問題が山積みである事も事実です。
まずは、公金ベースである人口種苗生産事業を維持発展可能なラインへと押し上げる必要があります。
完全養殖という観点で言えば、近代マグロはメディアや飲食経営事業者の協力によってブランディングに成功した実績があるので海外展開も含めてある程度期待は出来そうですが、人口種苗生産を軌道に乗せるには研究の発展と質の良い種苗、クロマグロ養殖事業者の協力が必要です。
クロマグロの完全養殖を目指す研究を応援する下地はメディアによって作られましたが、普及についてはクロマグロの養殖、流通に関わる事業者の協力が不可欠です。
クロマグロと深い繋がりを持っている日本が主導となって、新しいクロマグロ資源のコントロール方法を世界へ伝えて行く必要があると考えています。