食品は食べてもらう事で初めて消費者に品質が伝わります。
近大マグロと関アジのブランディングから成功の理由とその手法を分析します。
SNSをはじめとする個の発信力が高まり続ける今こそブランディングのチャンスだと言えそうです。
■公的機関と研究成果が育んだ近大マグロブランド
近畿大学水産研究所では1970年から養殖の研究に取り組んできました。
クロマグロの完全養殖に成功した事でメディアに注目されましたが、ヒラメやクエの人工孵化、網生簀式養殖法の研究、交雑魚生産の成功など水産事業を営む方々の間では時折話題になっていました。
公的機関であったためメディア、消費者からの注目度が高かった事、マグロの減少や資源保護が問題視される中、世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功した事で各種メディアに大きく取り上げられました。
2004年に初出荷を行った養殖マグロは継続して取り上げ続けたメディアの力で自然と近代マグロとして話題になり、和食チェーン大手のダイナックと協力して大阪、東京に実店舗展開をするまでに至ります。
飲食店経営のノウハウを持つ事業者とのコラボレーションによって近代マグロはまたしてもメディアに取り上げられる事になりました。
生マグロを1500円~2000円で提供し、安価で味の良いお店として認識した消費者達の拡散によって「テレビで話題の近代マグロは安くて美味しい」この情報がWEB上にも広がっていったのです。
2016年、富山実験場での生産を終了としましたが、これは飼育のデータが十分に得られた事が理由です。
より良い完全養殖を目指しデータの研究を進めており、富山実験場での研究再開に注目が集まっています。
■地域団体商標1号、大分の関アジ
大分市の佐賀関で水揚げされるアジは「関アジ」として5倍から10倍の価格で取引されています。
1996年には水産品として全国で初めて商標登録が認められ、20年経った今でもメディアから注目されています。
関アジが成功した最も大きな理由は厳格な生産管理、出荷のルール作りです。
元々地形を理由に一本釣りが行われていましたがこれを厳守とし、生きたまま重さを量らず売買を行う面買い、出荷時の生け締めとタグ付けをルールとして設けました。
漁協が中心となり長い時間をかけて浸透させたと言われていますが、ルールを全ての関連事業者に徹底させるには絶大な労力を要したと推測されます。
このドラマ性はTVでも大きく取り上げられました。
一定の品質を担保する事で小売業者からの信頼を勝ち取り、販売時にはあの「関アジ」として付加価値をつけて提供されており飲食店の評価を投稿する大手Webサイトには、消費者達が投稿した「関アジ」のキーワードが並んでいます。
■話題を提供する事、これから始める食品ブランディング
近大マグロと関アジ、両者に共通するポイントは独自性とメディア注目度の高さです。
美味しい、として話題になるには品質は絶対条件ですが、食べてもらうためには周知される事が必要になります。
今までに無かった取り組みは、味以外にもう1つ話題性という切り口を与えます。
Web上であってもそれは同じです。話題に上がる事でSNS上に自然と拡散されるのです。
味が良いというイメージを浸透させる為に、話題という付加価値をつけ露出を高める事が食品ブランディングの第一歩になります。浸透が進めば各種メディアにも取り上げられる事になるでしょう。
ジェイトレーディングの日本初クロアチアマグロ養殖事業者の買収やふるさと納税を利用した焼津市の成功は、TVやニュースサイトで取り上げられています。
話題性を利用したマグロのブランディングは既に始まっているのです。
新しい話題が提供されるのか、ブランドマグロの価格はどのように変動するのか水産事業者から注目が集まっています。